「ゆうかんなアイリーン」
ウィリアム・スタイグ作 おがわえつこ訳 セーラー出版

今年の大雪は半端ではなくて、豪雪地帯はライフラインも危ういほど。
子供にとってはうれしい雪でも、多すぎる雪は過酷です。
私達が暮らしている所も例年にない早い大雪にみまわれていて、
そんな中、このお話の中のアイリーンのたくましさを時折思い出します。

アイリーンは、風邪で寝込んでしまったお母さんのかわりに、
お母さんが仕立てたパーティのドレスをお屋敷の奥様に届けます。
この日のふぶきも激しく、容赦なくアイリーンにおそいかかってきます。
彼女はひとりでおやしきに向かいます。自分で自分をはげましながら。
ドレスが風にさらわれ、外も暗くなり、雪に埋まってしまっても、
最後の力をふりしぼって、彼女はなんとかおやしきたどりつく。
がんばったアイリーンを、おやしきの人々はあたたかく迎えてくれます。

雪の降りしきる日、家の中というのはいつもにも増してあたたかく感じられます。
アイリーンのおうちの、やかんがかけられているぽっくりとしただるまストーブ、
おかあさんの寝るベッドの下にひかれたふさふさの薄オレンジのラグ、
アイリーンがピンクのカップに入れたレモンとハチミツのおちゃ、
そのあたたかな色見と対照的に、ベネットぼくじょうやりんごかいどうの雪荒らしのすごいこと。
お屋敷にたどりついて、アイリーンが暖炉の前でいただいたお夕飯は、
体の芯から彼女をあたためてくれたことだろうな、とおもいます。

子供達はこのゆうかんなアイリーンの小さな冒険物語が大好きです。
おかあさんが作った(そしてアイリーンが無事届けることができた!)ドレスを着た奥様が、
ダンスパーティの中でひときわ美しく、そして鼻高々に踊っている姿に安心します。


2006.1.10



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